『Cathedral(大聖堂)』

《2021/インタラクティブアート》

■「キテミテ中之島2021」出品作品のコンセプト■

 中世の単旋律聖歌のグレゴリオ聖歌の発展としてオルガヌムという2声の合唱のポリフォニーの原型があり即興演奏の理論まであったという事実を2021年に初めて知ったことが、この作品を作るインスピレーションとなった。オルガヌムの2声の即興演奏をインタラクティブに演奏できないかと格闘した結果、シンプルな3声の聖歌風の男性合唱を即興演奏できるインタラクティブアート作品に行き着いた。
 コロナ禍で死に怯える人々、mRNAワクチン摂取への同調圧力に苦しむ人々など、人類全体が不確かな情報で分断されるという前代未聞の時代にあって、こころを癒す響きを身体の芯から感じることができる対話的な芸術表現を実現することが、表現者として今最も必要だと感じた思いを作品に込めた。
 5つの光るボタンを押すことで対話的に男声合唱を即興演奏できるようになっているが、ビジュアルでその荘厳な響きを体感できるように、パリのノートルダム大聖堂を模した外形を取り入れ、ファザード中央に薔薇窓のステンド・グラスを小型モニターで映し出して、演奏されたサウンドに荘厳に響くような光の表現を行なった。この作品は2019年に起きた大規模火災によるノートルダム寺院の悲劇と、それに心を痛めた民衆への哀悼の気持ちも込められている。

■「キテミテ中之島2021」への想い■

 「アートとは何か?」という問いは古代のギリシャ時代からの永遠のテーマであるが、さまざまな批判に耐えながら個々のアーティストが繰り広げる人間的な格闘にこそ貴い価値があると考えている。表現を通して個人的な自己に真剣に純粋に向き合う行為は、一見は内向きなパーソナルな孤立した人間活動でしかないように見えていて、世界や他者と切り離された人間などこの世に存在しないのであるから、実はそれが純粋であるからこそ外向きに反転して世界や他者につながっるコミュニケーションの回路ができ、人の心を豊かにする真の力となるのである。アーティストとしての長い活動を通して自覚できた私の思いをシンプルな言葉に集約すると、「人々を芸術と創造で笑顔にする」となるだろう。

■Profile■

1955
静岡県生まれ

1978
京都大学理学部(物理学第二教室 )卒業

現在 大阪芸術大学を拠点とした制作活動・パフォーマンス表現・ワークショップを展開
作家URL:http://commseed.com/

HyperKeyboardシリーズ(1989~)Interaction Paintingシリーズ(1993~)
N-E-W-Sシリーズ(2003~)DEN-WAシリーズ(2005~)など作品多数。

1992
コム博・インタラクティブアートギャラリー、1994年IMAGES DU FUTURE

1996
サイエンス・アート展、2004年VISION in Pragueなどに参加。

1994
「インタラクティブアート宣言」、2003年「芸術情報論」、童話作品などの著作。

《Photo image 仮想通貨?》